おはようございます。S&Tの上村です。

シリーズも5回目の今回は私が出会ったとんでもないアーティスト?のお話です。

昔々のお話です。私がまだ新人だった頃、事件は起こりました。

上司が見つけてきた、とある作家の企画展をするということで、担当を任せられた

時のことでした。いわゆる2世アーティストで、初めてその方の作品を見た時は

正直『ゴミだな。』と思いました。お父さんが画家の方で、この方は現在もオークション

などでもよく見かける素晴らしい方ですが、息子には遺伝しなかったのでしょう。

本当にひどいものでした。あまり詳しくは言えませんが、それを1点5万円とか10万円で

販売するということでした。私は新人なので特に発言権があるわけでもなく仕方なく

作家の担当になることに。

まずは顔合わせということで、某高級住宅街のご自宅にお伺いしました。

その時の様子はこうでした。クルクルの頭にオーバーオールを着たその方が

いきなり「こんにちは。僕は〇〇です。親父のことは知っていると思うけど、

僕はそれを超える天才なんだ。これ見て。素晴らしいと思わない。」と

金色のオタマジャクシを見せられました。それがとにかくひどくて、本気でそう

思っているなら頭がおかしいんじゃないかと疑ってしまう代物でした。

玄関にはその方のお父さんの素晴らしい作品がかかっているだけに一層ひどさが

際立っていました。

特に感想も言わず、とにかく一刻も早くその場から離れたかったのを覚えています。

そんな感情が顔や態度に出ていたんでしょうね。

それで気分を害したのか、その日のうちに上司のところに電話があったようで

私は上司に叱られました。ただ、上司も作品がひどいのはわかっていたようで

ちょっと色々あるから我慢してくれと最後に言われたのを記憶しています。

今ならそんな作品は死んでも扱いませんが。笑

結局、そのアーティスト?とは最後までそりが合わず、2〜3日で担当を降ろされて

しまいました。

長いディーラー生活でたくさんのアーティストとお会いしましたが、この方が一番

ひどかった。(^^;)

当然の結果ですが、結局この方は売れることはなく、今は見かけることもありません。

現在は何をしているんでしょうね。

アーティストはとかく社会常識がないなどとよく言われますが、そんなことはないと

思います。確かに、ちょっとずれている人もいますが、作品作りにはそういう人じゃな

きゃいけなかったりする場合もあるし、またそれは一つの個性でもあり、

一括りにアーティストはと語ってしまうのはどうなのかなとも思います。

最近のアーティストの方達は、特にきちんとしているように思います。

その人柄が良くて作品が売れている作家も見かけます。

(もちろん作品がいいのが前提ですが。)

作品と人柄は切り離して考えないといけないのでしょうが、作家と会ってしまうと

どうしてもその辺の感情が判断を鈍らせる場合もあるので、知らないほうが良い時も

ありますね。

また、新人の頃は初々しかった作家も売れた途端に豹変する作家もいます。

こういう人は隠していただけで、元々そういう人なのでしょうね。

幸いにもアートショップに出品してくださる作家は、今の所人格も素晴らしい方々です。

これから世界に羽ばたいて行っても、天狗になったりせずに変わらず純粋に作品を

作り続けて欲しいなと思います。

こんなお話があります。

その昔「俺は街を丸ごとデザインしたい。」と言っていた作家がいました。

彼は多少言葉が悪いものの、人を思いやれる優しい人柄で人々に好かれていました。

また、その人柄を反映するように素敵な作品も作っていました。

そして、彼の素晴らしい理想と発想に周りには助けてくれる人で溢れていました。

人に恵まれて仕事も順調にいっていました。

多忙な日々を送る中、いつしか彼は自分だけの才能や力で現在の地位になったと

勘違いするようになり、いつしか優しい気持ちを失ってしまいました。

時を重ね傲慢になってしまった彼は、自分以外の全てのものを責めるように

なりました。そして、どんなに自分が間違っていても決して非を認めない人間に

なってしまいます。作品にもそれが現れるようになり、とうとう彼の周りからは

一人、また一人と人が去っていき、結局孤独になっていきました。

そして、結局彼は絵を描けなくなりました。

なんだか寂しいですね。

これは何もアーティストに限ったことではないと私は思います。

『人のふり見て我がふり直せ。』という言葉が胸に沁みますね。

しゃねげど。笑

それでは今日も良い一日を。