こんにちは。S&Tの上村です。本日は『TRONIES〜3人の肖像画〜』はお休みです。先週も間違っていらっしゃった方いるようでしたのでお間違えのないようにお願いします。せっかく来ていただいたらちゃんと見て欲しいので。😞
さて、皆さん以前書いたウォーホル作品のフェアユースをめぐる裁判を覚えているでしょうか?
この裁判は写真家のリン・ゴールドスミスが、自分の写真を作品に流用したアンディ・ウォーホルに疑問を呈したことに対し、アンディ・ウォーホル財団がゴールドスミスを提訴したもの。
この司法判断が著作権の適用除外となるフェアユースの原則に関わる先例となる可能性があるため、多方面から注目されていました。ついにその判決が5月18日に下されました。
結果は7対2でゴールドスミスに有利な判断が。
米連邦最高裁判所はアンディ・ウォーホルの作品はリン・ゴールドスミスが撮影した写真の著作権を侵害しているとの判断を下しました
2019年に一旦はウォーホル財団を支持する判決が下されたものの、今回それがくつがえった形となりました。
ジェラルド・E・リンチ判事は、『問題となっている作品の背後にある意図や意味を連邦裁判官が判断することによって、美術評論家の役割を担うような事態は避けるべきだ。裁判官は一般的に美的判断をするのに適しておらず、また、そのような判断は本質的に主観的なものであるからだ』と意見を述べています。
裁判所の判決について、ウォーホル財団は次のような声明を発表した。
『作品「Orange Prince」の2016年のライセンスが、フェアユースの原則によって保護されないという裁判所の判断には同意しかねます。一方、裁判所の判断はその単一のライセンスに限定され、アンディ・ウォーホルが1984年にプリンスのシリーズを制作したことについての合法性を問うものではないと明らかにしたのは喜ばしいことです。著作権法および合衆国憲法修正第1条のもとでアーティストが変容的な作品を創作する権利を守るため、財団は今後も声を上げ続けていきます』
最高裁の決定なのでこの問題はこれで一旦は決着。
そもそもフェアユースとは、学術、報道、解説などについては知的財産を限定的に流用することを認める規定で、米著作権局はその目的を『表現の自由を促進する』ことにあるとしています。
今回の判決には作品が「変容的(トランスフォーマティブ)」であるかどうか、それを判断する裁判官によって先例が作られることへの懸念の声が上がっています。
実際、アーティストやコンテンツ制作者が、高額な費用のかかる訴訟を恐れて著作物の使用や参照を控えるようになり、文化交流や言論が制限されてしまう可能性もあるわけです。
ただ、アプロプリエーションと著作権侵害の境界がどこにあるかも微妙な問題でその判断をするのは非常に難しいと言わざるをえません。
「合理的な観察者」によって認められるかどうか、特に「新しい表現、意味、メッセージ」が込められていると判断できるかどうかなんて本当のところ誰もわからないですよね。
賛否両論色々あるこの問題、今後も解決しなさそうですね。😅
きっとこれからもたくさん争われることでしょう。この問題は永遠の課題となりそうです。
一つの作品でこれほど色々なことを語れるアートってやっぱり面白いですね。
それでは皆さん本日も良い1日を。