こんにちは、S&Tの上村です。連日辺藝の話題ですが、9月1日から公開制作している石川君の壁画はシレッと完成しております。もう皆さんご覧いただきましたか?

お客さんの中には夜こっそり来て車のヘッドライトに浮かび上がる石川君の壁画の様子をカッコよく映像に残している方もいましたよ。ま、夜の撮影の様子を想像すると完璧に不審者ですが。(笑)

アーティストツアーなどに行った方はご存知かと思いますが、ただ見ただけではわからないこともあります。そろそろその全貌を知りたいですよね?

Landscape with eyes / 石川琢弥

今日はそんな皆さんのためにちょっと解説を。

この壁画は靉光の『眼のある風景』が参考になっています。石川君の解釈で現代的に再構築されたともいうべき作品となります。靉光の作品についてはご自分で調べてみて下さい。すぐに出てきますよ。

眼のある風景 / 靉光
油彩
1938年
東京都国立近代美術館蔵

ちなみに、眼のモデルは石川君の眼と石川君の奥様の眼を組み合わせて構成しているそうです。

彼は壁画制作にあたり、絵画そのものが作品ということよりも壁画が描かれたその場を作品とすることを真っ先に考えました。

建物に『眼』を描き入れることで建物は擬人化されます。

壁画が描かれた扉には元々幾年も経たサビや傷が無数にありました。これは数年でできるような風化ではないことは誰の目にも明らかです。そこで彼はその建物が鑑賞者と互いに見合うことになれば面白いのではないかと考えました。

本来作品は鑑賞者が観るものです。しかし、建物と鑑賞者が互いに観あう事により「その場所」は建物にとっても鑑賞者にとっても作者にとっても深く関係を結びつけるそんな作品になればという思いのもと制作されたのです。

石川君のことをご存知の方は周知の通りですが、彼は素材に徹底的にこだわります。サビや傷を残した素地作りをし、尚且つ日光や雨風に耐えうる画材選びには細心の注意が払われています。彼の持てる知識を総動員し、西洋美術の古典様式を思う存分使って堅牢な仕上がりと絵肌を目指したそうですよ。

そこには彼らしい素材が選ばれていてそこも非常に面白いですね。そんな秘密を紐解きながら鑑賞するとまた違った発見があるかもしれませんね。

賛否両論色々あるようですが、そんな議論が生まれる事自体私は大成功なんじゃないかと思っています。だって、現代美術の祭典なんですから。

今回の辺藝では壁画以外にもそんな様々なことを考えさせられる作品があちこちに点在しています。ただ観るだけでも面白いのですが、そんなことを想像しながら深く考えて改めて観るとより面白い世界が目の前に広がるかもしれませんね。

ぜひ二度三度と足を運んで鑑賞してください。

そして、受付によってコーヒーでも飲みながら私に感想を聞かせて下さいね。

大歓迎ですよ。🤗

それでは皆さん本日も良い1日を。