こんにちは。S&Tの上村です。今から約26年前に、私が独立してアートディーラーを始めた頃、初めて海外のアーティストを紹介したのがThomas Ruff(トーマス・ルフ)でした。今でこそ大御所のアーティストですが、当時、日本での認知度は全くありませんでした。そんな中で横浜美術館が永久コレクションにする事に決めた時はすごいなぁと感心したのを覚えています。価格もオリジナルでもかなり安かった記憶があります。
では私はどうして取り扱い始めたのか?『見る目があったんです!』と自慢したいところですが、とある大手オークション会社サ○ビーズの方に『かみちゃんこの作家いいよ。』と紹介されたのがきっかけでした。当時も今もギャラリーやディーラーというのは無数に存在しています。そこでやはり特徴を出すために何か目玉となる作家がいないかを探している時でした。まだまだ駆け出しの私に見る目があったのかどうかは定かではないですが、ルフの写真を見たときに衝撃をうけました。なんだかわからないがとにかくカッコいい。そしてその大きさにも圧倒されたのを覚えています。
その後ルフのことを知れば知るほどのめり込んでいきました。だって、自分で撮っていない写真家って何?と思うでしょう。笑
それが私とルフ作品との出会いでした。それから私はルフをお客様に紹介し始めましたが、当時は日本で紹介しているところはまずなかったと思います。お客様の反応も今ひとつでしたよ。(⌒-⌒; )
でも最先端の職業の人たちは飛びついていました。今思えばさすがと言うべきかすごい感性ですよね。
当時ルフのリミテッド・エディションも販売していましたが今では信じられない価格で売っていましたよ。例えば、ルフの代表作の一つで星の作品がありますが、私のお客様は一枚10万円前後で入手していました。現在は安くても一枚70万円くらいしますね。当時、私を信じて購入されたお客様は喜んでくれていると思います。私も嬉しいですね。
ここでルフの面白さがわかる彼の発言をチラッとご紹介したいと思います。
「私は、写真が現実を切り取るものだ、という考えは、必ずしも正しくないと思っています。もちろんカメラは現実を記録しますが、それはカメラを構える人間が選択した現実なのです。最も客観的に見える写真でさえ、実は主観的なものなのです。最も客観的な写真とは、天体写真ではないかと考えたのです。なぜなら天体写真の場合、作者としての私は、何も操作できないのです。私はあきらめる他ないのです。自分自身でこのような写真を撮ることはできないのですから。」ートーマス・ルフ
そして、彼は自分で撮ることさえやめてこの作品を作ったのです。面白いでしょう。\(^o^)/
Thomas Ruff(トーマス・ルフ)は、日本では2016年に大規模な展覧会が開催されようやく知られるようになりましたが、その時私は今頃かと思ったのを覚えています。だって、私が紹介し始めてから20年以上たっていたのですから。
日本では残念ながらそうなってからお問い合わせが増えます。しかし、以前から言っているようにそうなってからでは価格が上がっている上に入手しずらいのです。このルフがわかりやすい例ですよね。当時私が販売していたものは現在では入手が困難でおそらく市場に出てくればそれなりの価格になっているでしょう。
このルフの例はほんの一例で、そういう作家がたくさんいることを覚えておいてくださいね。今でこそ皆さんご存知の草間彌生さんなんかも日本では最近ですもんね。でも彼女も随分昔から海外では第一線で活躍しているんですよ。
そういう経緯もあるためルフは今でも私の得意な作家の一人です。現在ルフは現代アートにおいてもっとも重要なアーティストの一人と言えるでしょう。彼は意欲的に新しいシリーズを発表し続けていますが、どれも本当に面白いです。昔のものは入手が難しいですが様々な作品を適正な価格でお譲りできると思います。ご興味ある方は是非調べて見てくださいね。