こんにちは。S&Tの上村です。今日はTHIERRY COHEN(ティエリー・コーエン)という作家をご紹介したいと思います。

1963年生まれの彼はフランス出身で、1985年から写真家として活動しています。まずは彼の作品を見てみましょう。

Tokyo 35° 41’ 36’’ N 2011-11-16 lst 23:16
San Francisco 37° 48’ 30’’ N 2010-10-09 lst 20:58
Shanghai 31° 13’ 22’’ N 2012-03-17

全くひと気のない都市に満点の星空の彼の写真は、まるで世界が滅亡したあとの風景のようにも見えます。

都市が発展し地上の光は増加し空気汚染が深刻化しました。それにともなって、宇宙を観察する人間の能力は日々損なわれてしまっています。彼の代表作とも言えるこの『Darkend Cities』というシリーズはその事に目をつけた作品です。

実は彼の作品は合成によって作られていますが、彼は「2つの現実を組み合わせることで“第3の現実”をつくり出します。第3の現実は目には見えない景色ですが、しかし存在しているんです」と言っています。

また、彼は「わたしは消えてしまった星々を表現しています。写真は目に見えないものを提示する方法であり、夢を見せる方法でもあります。わたしが描いているのは、電力がない都市や文明が滅亡したあとの都市ではありません。都市に沈黙を呼び戻しているのです」と言っています。

なるほどと納得しちゃいました。

この『Darkened Cities』からは人類が手に入れたものと失ったものを同時に感じることができます。彼の作品はメディアを賢く扱うことで写真が単なる物体から批判的思考のきっかけへと変化することを教えてくれるんですね。そして、さらに別の存在の可能性を喚起し、別世界をも垣間見せてくれています。

彼の作品はとても詩的で美しい作品です。そして、その作品は美しいだけでなくその違和感とともに非常に様々な問題を雄弁に私たちに語りかけてきます。

「写真は、現実に関するものである以上に詩に関するものでもあります。写真は世界の見方を表現します。表現したい世界があれば、写真はそれを表現できるのです」ーティエリー・コーエン

ご興味ある方はいつものようにS&Tまでお問い合わせ下さいね。