こんにちは。S&Tの上村です。毎日ニュースを賑わせているのは戦争や殺人の話題。なんだか殺伐とした世界で安心できない世の中になっちゃいましたね。悲しいことです。

皆さんは『Defending Creative Voices(クリエイティブな声を守る)』というユネスコの報告書はご存知ですか?

https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000385265

これによると芸術の自由に対する侵害行為が増加しているということです。また、投獄されるアーティストの数が増加し、殺害されるケースもあることも報告されています。

作品に対する検閲からアーティストへの直接的な攻撃まで、芸術の自由の侵害は2021年に1200件を超え、39人のアーティストが命を落とし、119人が投獄されたということです。

報告書にはこう記述されています。

『過去数十年にわたり、緊急時にジャーナリストの安全をどう確保するかが大きな関心を集めてきた。その結果、国際的にも、また地域や国のレベルでも、有効な法律や政策が確立されている。一方、アーティストや文化関連の専門家は、ジャーナリストと同様、身の安全や生活への深刻な脅威に直面しているにもかかわらず、報道関係者のような活動の機会や保護のためのセーフティネットがない』

これは深刻な問題です。

アーティストは雇用や報酬が不安定で、保険や年金も整っておらず、団体交渉という方法を取りにくいため、生活が安定しづらいばかりか、緊急事態が発生したときにはさらに弱い立場に陥りやすいと報告書は指摘しています。

まさにその通りです。だからいつも言っているように若手アーティストの作品は気に入ったら買うべきなんですね。もちろんそれだけではありませんが。

ジャーナリストの場合は支援を行う体制がすでに整っていますが、アーティストにも同様の司法的支援を行うべきですよね。

また、アーティストが逮捕、起訴、判決を受けた事例のうち3件に1件は、オンライン上の活動に起因するものだったというのです。

アーティストに対する嫌がらせや荒らしも横行するようになっています。特に女性アーティストが被害に遭うことが多く、裁判によって対処しにくいことが問題を深刻化させているんだそうです。

ソーシャルメディアではガイドラインが曖昧なため、アーティストへの検閲や自主規制が目立ちます。こうしたガイドラインはアルゴリズムによって適用されるもので、何がアートで何がガイドライン違反かの適切な判断がなされていないのが現状です。そのため、ガイドラインがかえってアーティストへの攻撃に利用されやすくなっているということです。

また、ソーシャルメディアのユーザーがコンテンツにタグ付けすることによって、『世論による検閲』ともいうべき現象が生まれ、『特定の芸術表現が標的になりやすい』とユネスコの報告書は分析しています。

特定の芸術表現とは、伝統的な価値観に異を唱えるような作品や、女性・LGBTQのアーティストが制作した作品を指しています。

その結果、アーティストは特定のコンテンツをオンラインで公開することを自主規制し、結果としてそうしたアートに触れる機会がなくなる可能性があるとしてユネスコは懸念を示しています。

本当にその通りですね。

この問題は皆さんもぜひ真剣に考えてみて下さい。今後ずっと議論されていくであろう問題です。

そして、自分ができることは何かを考え行動に移すことです。

小さなことかもしれませんがそれが大切なことだと私は思います。

というわけで本日の1品です。

Cleopatra from ANTI-ICON: APOKALYPSIS, 2021 / MARTINE GUTIERREZ
C-print mounted on Dibond, hand-distressed welded aluminum frame, optium plexi
139.7 x 97.8 cm
Edition of 7

S&Tではもうお馴染みのマルティーヌ・グティエレスのANTI-ICON: APOKALYPSISというシリーズの作品です。現在も展覧会中の作品ですが、こちらは来年まで各地の美術館やギャラリーなどで展示される予定が決まっています。

先日も発売前にスペシャルエディションが完売してしまいました。これからますます活躍するLGBTQを代表するアーティストです。

マルティーヌ・グティエレスは1989年カリフォルニア州バークレー生まれのアーティストです。

彼女の作品は、ジェンダーと美の従来の表現に疑問を投げかけるポップの影響を受けた物語のシーンを作成することによって、アイデンティティの多様性を探求しています。しばしば自分自身をモデルとして使用し、主題と創造者の両方の役割を果たし、ファッション、広告、映画の言語をユーモアと想像力で変え、女性であることが何を意味するのかを問いかけます。

「私の作品は、私が自分自身をどのように見ているのか、または見られたいのかを伝え続けています。それは、社会的構成要素に操作されることなく、私の美しさと性別の表現を検証するために私が見つけた唯一の方法です。」
ーマルティーヌ・グティエレス

彼女の作品は詳細をよく見るとさまざまな違和感に気がつくはず。そしてその色彩は常に美しいんです。

もちろんお問い合わせはS&Tまで。オススメです。

それでは皆さん本日も良い1日を。